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情報のタイトル 大型・商用モビリティ(HDV)向け燃料電池の技術開発ロードマップ
詳細内容  NEDOは、2020年度から「燃料電池等利用の飛躍的拡大に向けた共通課題解決型産学官連携研究開発事業」で燃料電池の技術開発を推進しており、このたび大型トラックや鉄道、船舶、建設機械、農業用機械、産業用機械などの大型・商用モビリティ(HDV)に向けた「HDV用燃料電池技術開発ロードマップ」を作成し、公開しました。

 本ロードマップでは2030年頃には燃料電池を搭載したHDVが普及し始めると想定し、大型トラックや鉄道など各用途で求められる仕様と技術開発動向から目標とする燃料電池の性能をまとめました。また、目標とする性能を達成するために必要となる材料の特性や技術開発の課題も提示しました。

 NEDOは今後、本ロードマップで示した技術課題の解決につながる事業を公募し、社会実装に向けて取り組んでいきます。

1.概要
 NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)は2005年から燃料電池の社会実装や普及拡大に向けた技術開発ロードマップを公開してきました。燃料電池は発電効率が高く、水素を燃料とした場合には水だけが排出されるクリーンなエネルギーデバイスであることから、すでに燃料電池自動車(FCV)や家庭用燃料電池「エネファーム」として製品化されています。

 一方世界では、CO2排出量が多い大型・商用モビリティ(HDV)※1は航続距離や運転条件などからバッテリーのみでは電動化が困難なことから燃料電池を適用させる開発競争が活発になっています。このような状況を受けて、このたびNEDOは「燃料電池等利用の飛躍的拡大に向けた共通課題解決型産学官連携研究開発事業」において産業界や大学、研究機関と議論を重ね、2030年頃の普及時に求められる燃料電池の性能やそれに求められる触媒や電解質などの材料特性、技術開発課題をまとめ、「HDV用燃料電池技術開発ロードマップ」として公開しました。

 本技術開発ロードマップの策定により、産業界や大学、研究機関などのステークホルダー間で目指すべき方向性や具体的な目標性能を共有できることから、研究開発の効率化や加速化につながることが期待できます。

 なお、本技術開発ロードマップは主要な目標や技術課題をまとめた本体と、目標値の算出条件などを含む詳細な解説書で構成されます。いずれも、以下のNEDOウェブサイトに掲載しています。


NEDO燃料電池・水素技術開発ロードマップ

2.HDV用燃料電池技術開発ロードマップの概要
 燃料電池を適用できる可能性が高い代表的なHDVには、大型トラックや鉄道、船舶、建設機械(油圧ショベル)、農業用機械(トラクタ)、産業用機械(フォークリフト)があります。本技術開発ロードマップでは2030年頃にこうした用途への燃料電池の搭載が本格的に始まると想定し、各用途で要求される最大出力や耐久時間、冷却性能、搭載スペース・重量などの仕様をまとめました。

 HDVは高い運転負荷や搭載スペースの制約による冷却性能の限界から、用いられる燃料電池にはFCV用よりもさらに高い温度域での動作や高耐久性が求められます。今回策定した技術開発ロードマップでは、各用途の仕様を満たす燃料電池スタック・システムに共通する性能目標(2017年に公開したFCV用ロードマップ※2と同程度)に加えて、HDVに求められる厳しい運転条件や長い耐久時間を新たな目標として設定しました。具体的には、燃料電池スタックの初期性能(連続定格動作点※3)は電圧0.77V@1.63A/cm2、希少金属である白金の触媒としての使用量は0.19g/kW、運転温度は-30℃~+105℃、各用途で想定される走行パターンを模擬した際の耐久時間は大型トラックや鉄道では5万時間、内航貨物船では6万時間、油圧ショベルでは1万時間を目標に掲げています。これらの目標は米国や欧州で示されている2030年の目標に比べて野心的なものとなっています。

 また燃料電池スタックの目標性能を満たすために、触媒や電解質、GDL※4、セパレータといった材料ごとに求められる特性を現在の技術レベルや将来の伸びしろから推定し、シミュレーションにより目標を設定しました。具体的には、触媒の活性や電解質の伝導率、ガスの拡散性をそれぞれ2倍~3倍程度向上させるとともに、105℃運転(冷却水出口温度)で最大120℃と推定される内部温度に耐えうる材料系の構築が求められることとしています。これらの目標を基に、基盤・要素・実用化の各段階で今後取り組むべき技術課題も併せて提示しました。

3.今後の予定
 NEDOはHDV用燃料電池について2040年頃の目標についても引き続き議論するとともに、2022年度には2017年に公開したFCV・移動体(水素貯蔵を含む)、家庭用燃料電池、業務・産業用燃料電池ロードマップの改訂を予定しています。また、ロードマップで掲げた目標の実現に向けて本事業で取り組む内容を拡充し、社会実装に向けて取り組んでいきます。世界に先駆けてFCVを製品化してきた産業界と大学、研究機関の技術力を基盤とした効率的な研究開発を推進することで、競争力を維持するとともに、カーボンニュートラルの実現に貢献していきます。
関連URL

(1)燃料電池の技術開発ロードマップを公開(別ウィンドウ)

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