レッドデータブックやまぐち
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刊行にあたって

I はじめに

 私たちが追求してきた現代文明は、科学技術の進歩によって人類の生活を著しく快適かつ便利にした。その反面、環境は地球規模で汚れ、生物に大きな影響を与えるようになってきた。1960年代に入ると、絶滅した生物の報告が世界各地から寄せられ、国際自然保護連合はレッドリストを刊行したが、その後も絶滅の危機に瀕する野生生物の数は年々増加し、1975年頃には地球上から毎年1,000種もの野生生物が失われているという報告が出されるようになった。このため、野生生物の絶滅問題は、科学者の間で人類の生存に関わる大きな問題として認識され、その保全をめぐって真剣に議論が行われるようになってきた。
 日本でも、トキに代表されるように、絶滅の危機に瀕した野生生物の保護策が積極的に進められてきた。その甲斐なく絶滅した種もあったが、いったん絶滅したと考えられた種が再発見され、保護に成功した例も多く、悲喜こもごもの話題がマスコミに取り上げられている。
 そもそも、野生生物は46億年にわたる地球史の中で誕生したもので、この多様な野生生物たちこそが地球環境の創造者であった。しかも、野生生物の多様な生命は人類の生活を支え、多くの薬効や心の安定を約束する資源にもなってきた。古来日本人は、この野生生物の保護を巧みな方法を駆使して進めてきた。自然史民俗学によると、人々はクマやマムシといった危険な野生生物も神のように敬い保護してきたものである。
 その後、野生生物の絶滅に対する国家的な取り組みは国連によって取り上げられ、1992年6月にブラジルで開かれた地球サミットで、「生物の多様性に関する条約」が締結された。この条約は政府の負うべき必要最低限の責任を示したもので、これに調印した国は155の国家とEUであった。
 日本では、これに先立って、1991年に環境庁が「絶滅のおそれのある野生生物(レッドデータブック)」の脊椎動物編と無脊椎動物編を刊行し、さらに1992年5月に「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」を成立させた。続いて1995年10月に生物多様性国家戦略を策定して、日本も国家として本格的に野生生物の保護が進められることとなったわけである。 
 山口県では、1994年から県内に在住する野生生物の研究者、生物愛好家を総動員し、県内に生息する野生生物の実態調査を始めた。当初は、県内に生息する野生生物に関する文献調査が取り上げられ、さらに標本による実態調査、生態調査が行われ、その成果として1995年に「山口県の貴重な野生生物」が出版された。この冊子では、県内の陸上、淡水に生息する植物(シダ植物、裸子植物、被子植物)、動物(哺乳類、鳥類、は虫類、両生類、魚類、昆虫類、貝類)のなかで、環境省のレッドデータブック掲載種、本県特産種、分布が局限された種、天然記念物指定種、国際・国内稀少野生動植物種、生息数が極めて少ない種などが中心に取り上げられている。
 その後、県では環境政策の基本となる「やまぐち未来デザイン21」を制定して、野生生物の保護にも正面から取り組む姿勢を示した。そして1997年から、さらに野生生物の実態調査を継続的に進め、前報告の不備を補いながら、新たに県独自のレッドデータブックといえる本書の編纂が行われることとなったものである。
 本書では、新たにコケ植物、クモ類、甲殻類(エビ、カニ類)を加え、県内に生息する種の生態を中心に調査を進め、特に減少傾向を示し、かつ絶滅のおそれのある種を選定した。
 この冊子の目的は、単なる山口県の絶滅危惧に瀕した野生生物を紹介するだけではない。更に生物の生態(個体数の変動等)や分布などの現状を詳しく紹介し、県民総ぐるみで種の保全を全うするための基礎資料として役立てようというものである。
 本レッドデータブックは環境省レッドデータブックに従って陸上、淡水を中心に取りまとめられたが、将来は調査範囲を汽水、海水といった地域を含めていき、調査対象生物も植物では菌類や藻類、動物では節足動物(多足類やカニムシ類、ダニ類など)、環形動物、扁形動物など大幅に広げてゆくことが望まれる。このためにも、調査体制を再構築し、調査員は常に新しい情報を継続的に収集し、急激に変化する生物の変化を機敏に捉える体制作りが必要となる。こうした過程を経て、レッドデーターブックは定期的に改訂されながら、より完成されたものになることが望まれよう。
 
平成14年3月
 
山口県野生生物保全対策検討委員会
会 長  谷 国 勝 美
 
 
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