Ⅲ 種の選定

1.選定対象

(1) 基本的な考え方

山口県レッドリストに掲載する絶滅のおそれのある種の選定にあたっては、環境省レッドリストの調査・選定基準をもとに、以下の考え方を基本とした。

  1. 山口県内に生息生育する野生生物であること。ただし、迷鳥等県内に安定的に生息していないと考えられるものは除く。
  2. 陸産・淡水産(生活史の一部を陸水域で過ごす生物を含む)及び陸域ときわめて密接な関係を持つ海岸域の生物のみとし、純海産のものは除く。
  3. 外来種や飼育種であっても、現在野生状態で安定的に生息し繁殖している種については、県内産の野生生物とみなすが、ペットや熱帯魚等もっぱら温室等で飼育、栽培されて生息生育しているものは除く。

対象生物群の設定

対象とする生物群はレッドデータブックやまぐち(2002,貝類2003)と同一とし、それぞれの生物群の調査検討専門部会(表1)において調査を行った。

なお、カブトガニについては、生物群としてではなく、県内に特徴的に生息する保護を要する種として、種単位で対象としている。

表1 生物群・調査検討専門部会

生   物   群 調査検討専門部会
動物 脊椎動物 ほ乳類 ほ乳類専門部会
鳥類 鳥類専門部会
両生類 両生類・は虫類専門部会
は虫類
淡水産魚類 淡水産魚類専門部会
無脊椎動物 甲殻類(カブトガニ含む) 甲殻類専門部会
昆虫類 昆虫類・クモ類専門部会
クモ類
陸・淡水産貝類 陸・淡水産貝類専門部会
植物 維管束植物 シダ植物 植物専門部会
種子植物
コケ植物

2.選定要領

選定作業は下記フロー図に示す手順で実施した。

選定要領フロー

3.選定評価(カテゴリー付け)

最終的に選定された種の、絶滅危惧の度合を示すカテゴリー(ランク)については、環境省第4次レッドリスト(環境省2012)(表2)で使用されているカテゴリーを基準とした。

選定評価(カテゴリー付け)

表2 環境省レッドリストカテゴリー(環境省2012)

カテゴリー(ランク)と判定基準

カテゴリー及び基本概念 定性的要件 定量的要件
絶滅
Extinct (EX)
我が国ではすでに絶滅したと考えられる種(注1.以下同じ)
過去に我が国に生息したことが確認されており、飼育・栽培下を含め、我が国ではすでに絶滅したと考えられる種  
野生絶滅
Extinct in the Wild (EW)
飼育・栽培下、あるいは自然分布域の明らかに外側で野生化した状態でのみ存続している種
過去に我が国に生息したことが確認されており、飼育・栽培下、あるいは自然分布域の明らかに外側で野生化した状態では存続しているが、我が国において本来の自然の生息地ではすでに絶滅したと考えられる種
【確実な情報があるもの】
①信頼できる調査や記録により、すでに野生で絶滅したことが確認されている。
②信頼できる複数の調査によっても、生息が確認できなかった。
【情報量が少ないもの】
③過去50年間前後の間に、信頼できる生息の情報が得られていない。
 
絶滅危惧
T H R E A T E N E D
絶滅危惧Ⅰ類
Critically Endangered + Endangered (CR+EN)
絶滅の危機に瀕している種
現在の状態をもたらした圧迫要因が引き続き作用する場合、野生での存続が困難なもの。
次のいずれかに該当する種
【確実な情報があるもの】
①既知のすべての個体群で、危機的水準にまで減少している。
②既知のすべての生息地で、生息条件が著しく悪化している。
③既知のすべての個体群がその再生産能力を上回る捕獲・採取圧にさらされている。
④ほとんどの分布域に交雑のおそれのある別種が侵入している。
【情報量が少ないもの】
⑤それほど遠くない過去(30年~50年)の生息記録以後確認情報がなく、その後信頼すべき調査が行われていないため、絶滅したかどうかの判断が困難なもの。
絶滅危惧 ⅠA類
Critically Endangered (CR)
ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いもの。
A.次のいずれかの形で個体群の減少が見られる場合。
  1. 過去10年間もしくは3世代のどちらか長い期間(注2.以下同じ)を通じて、90%以上の減少があったと推定され、その原因がなくなっており、且つ理解されており、且つ明らかに可逆的である。
  2. 過去10年間もしくは3世代のどちらか長い期間を通じて、80%以上の減少があったと推定され、その原因がなくなっていない、理解されていない、あるいは可逆的でない。
  3. 今後10年間もしくは3世代のどちらか長期間を通じて、80%以上の減少があると予測される。
  4. 過去と未来の両方を含む10年間もしくは3世代のどちらか長い期間において80%以上の減少があると推定され、その原因がなくなっていない、理解されていない、あるいは可逆的でない。
B.出現範囲が100㎢未満もしくは生息地面積が10㎢未満であると推定されるほか、次のうち2つ以上の兆候が見られる場合。
  1. 生息地が過度に分断されているか、ただ1カ所の地点に限定されている。
  2. 出現範囲、生息地面積、成熟個体数等に継続的な減少が予測される。
  3. 出現範囲、生息地面積、成熟個体数等に極度の減少が見られる。
C.個体群の成熟個体数が250未満であると推定され、さらに次のいずれかの条件が加わる場合。
  1. 3年間もしくは1世代のどちらか長い期間に25%以上の継続的な減少が推定される。
  2. 成熟個体数の継続的な減少が観察、もしくは推定・予測され、かつ次のいずれかに該当する。
    a)個体群構造が次のいずれかに該当
    i)50以上の成熟個体を含む下位個体群は存在しない。
    ii)1つの下位個体群中に90%以上の成熟個体が属している。
    b)成熟個体数の極度の減少
D.成熟個体数が50未満であると推定される個体群である場合。
E.数量解析により、10年間、もしくは3世代のどちらか長い期間における絶滅の可能性が50%以上と予測される場合。
絶滅危惧 ⅠB類
Endangered (EN)
ⅠA類ほどではないが、近い将来における野生での絶滅の危険性が高いもの。
A.次のいずれかの形で個体群の減少が見られる場合。
  1. 過去10年間もしくは3世代のどちらか長い期間を通じて、70%以上の減少があったと推定され、その原因がなくなっており、且つ理解されており、且つ明らかに可逆的である。
  2. 過去10年間もしくは3世代のどちらか長い期間を通じて、50%以上の減少があったと推定され、その原因がなくなっていない、理解されていない、あるいは可逆的でない。
  3. 今後10年間もしくは3世代のどちらか長期間を通じて、50%以上の減少があると予測される。
  4. 過去と未来の両方を含む10年間もしくは3世代のどちらか長い期間において50%以上の減少があると推定され、その原因がなくなっていない、理解されていない、あるいは可逆的でない。
B.出現範囲が5,000㎢未満もしくは生息地面積が500㎢未満であると推定されるほか、次のうち2つ以上の兆候が見られる場合。
  1. 生息地が過度に分断されているか、5以下の地点に限定されている。
  2. 出現範囲、生息地面積、成熟個体数等に継続的な減少が予測される。
  3. 出現範囲、生息地面積、成熟個体数等に極度の減少が見られる。
C.個体群の成熟個体数が2,500未満であると推定され、さらに次のいずれかの条件が加わる場合。
  1. 5年間もしくは2世代のどちらか長い期間に20%以上の継続的な減少が推定される。 2.成熟個体数の継続的な減少が観察、もしくは推定・予測され、かつ次のいずれかに該当する。
    a)個体群構造が次のいずれかに該当  i)250以上の成熟個体を含む下位個体群は存在しない。
     ii)1つの下位個体群中に95%以上の成熟個体が属している。
    b)成熟個体数の極度の減少
D.成熟個体数が250未満であると推定される個体群である場合。
E.数量解析により、20年間、もしくは5世代のどちらか長い期間における絶滅の可能性が20%以上と予測される場合。
  絶滅危惧Ⅱ類
Vulnerable (VU)
絶滅の危険が増大している種 現在の状態をもたらした圧迫要因が引き続き作用する場合、近い将来「絶滅危惧Ⅰ類」のカテゴリーに移行することが確実と考えられるもの。
次のいずれかに該当する種
【確実な情報があるもの】
①大部分の個体群で個体数が大幅に減少している。
②大部分の生息地で生息条件が明らかに悪化しつつある。
③大部分の個体群がその再生産能力を上回る捕獲・採取圧にさらされている。
④分布域の相当部分に交雑可能な別種が侵入している。
A.次のいずれかの形で個体群の減少が見られる場合。
  1. 過去10年間もしくは3世代のどちらか長い期間を通じて、50%以上の減少があったと推定され、その原因がなくなっており、且つ理解されており、且つ明らかに可逆的である。
  2. 過去10年間もしくは3世代のどちらか長い期間を通じて、30%以上の減少があったと推定され、その原因がなくなっていない、理解されていない、あるいは可逆的でない。
  3. 今後10年間もしくは3世代のどちらか長期間を通じて、30%以上の減少があると予測される。
  4. 過去と未来の両方を含む10年間もしくは3世代のどちらか長い期間において30%以上の減少があると推定され、その原因がなくなっていない、理解されていない、あるいは可逆的でない。
B.出現範囲が20,000㎢未満もしくは生息地面積が 2,000㎢未満であると推定され、また次のうち2つ以上の兆候が見られる場合。
  1. 生息地が過度に分断されているか、10以下の地点に限定されている。
  2. 出現範囲、生息地面積、成熟個体数等について、継続的な減少が予測される。
  3. 出現範囲、生息地面積、成熟個体数等に極度の減少が見られる。
C.個体群の成熟個体数が10,000未満であると推定され、さらに次のいずれかの条件が加わる場合。
  1. 10年間もしくは3世代のどちらか長い期間に10%以上の継続的な減少が推定される。
  2. 成熟個体数の継続的な減少が観察、もしくは推定・予測され、かつ次のいずれかに該当する。
    a)個体群構造が次のいずれかに該当
     i)1,000以上の成熟個体を含む下位個体群は存在しない。
     ii)1つの下位個体群中にすべての成熟個体が属している。
    b)成熟個体数の極度の減少
D.個体群が極めて小さく、成熟個体数が1,000未満と推定されるか、生息地面積あるいは分布地点が極めて限定されている場合。
E.数量解析により、100年間における絶滅の可能性が10%以上と予測される場合。
準絶滅危惧
Near Threatened (NT)
存続基盤が脆弱な種 現時点での絶滅危険度は小さいが、生息条件の変化によっては「絶滅危惧」として上位カテゴリーに移行する要素を有するもの。
次に該当する種
生息状況の推移から見て、種の存続への圧迫が強まっていると判断されるもの。具体的には、分布域の一部において、次のいずれかの傾向が顕著であり、今後さらに進行するおそれがあるもの。
a)個体数が減少している。
b)生息条件が悪化している。
c)過度の捕獲・採取圧による圧迫を受けている。
d)交雑可能な別種が侵入している。
 
情報不足
Data Deficient (DD)
評価するだけの情報が不足している種
次に該当する種
環境条件の変化によって、容易に絶滅危惧のカテゴリーに移行し得る属性(具体的には、次のいずれかの要素)を有しているが、生息状況をはじめとして、カテゴリーを判定するに足る情報が得られていない種。
a)どの生息地においても生息密度が低く希少である。
b)生息地が局限されている。
c)生物地理上、孤立した分布特性を有する(分布域がごく限られた固有種等)。
d)生活史の一部又は全部で特殊な環境条件を必要としている。
 
絶滅のおそれのある地域個体群
Threatened Local Population (LP)
地域的に孤立している個体群で、絶滅のおそれが高いもの。
次のいずれかに該当する地域個体群
①生息状況、学術的価値等の観点から、レッドデータブック掲載種に準じて扱うべきと判断される種の地域個体群で、生息域が孤立しており、地域レベルで見た場合、絶滅に瀕しているかその危険が増大していると判断されるもの。
②地方型としての特徴を有し、生物地理学的観点から見て重要と判断される地域個体群で、絶滅に瀕しているか、その危険が増大していると判断されるもの。
 

(注1)種:動物では種及び亜種、植物では種、亜種及び変種を示す。
(注2)過去10 年間もしくは3世代:1世代が短く3世代に要する期間が10 年未満のものは年数を、1世代が 長く3世代に要する期間が10 年を超えるものは世代数を採用する。

表3 山口県野生生物目録(県内産リスト)

生  物  群 目 録 種 数
動物 脊椎動物 ほ乳類 7目 18科 46種
鳥類 21目 74科 402種
両生類 2目 8科 19種
は虫類 2目 9科 16種
小   計   48目 151科 614種
無脊椎動物 甲殻類(カブトガニ含む) 3目 18科 38種
昆虫類
25目 419科 7,943種
  イシノミ目
シミ目
トンボ目
カゲロウ目
ハサミムシ目
ガロアムシ目
カワゲラ目
ナナフシ目
バッタ目
カマキリ目
ゴキブリ目
シロアリ目
チャタテムシ目
アザミウマ目
カメムシ目
コウチュウ目
ラクダムシ目
ヘビトンボ目
アミメカゲロウ目
ハチ目
シリアゲムシ目
ネジレバネ目
ハエ目
トビゲラ目
チョウ目(ガ)
チョウ目(チョウ)
  1科
1科
12科
9科
4科
1科
5科
1科
16科
2科
5科
1科
6科
2科
60科
101科
2科
2科
7科
41科
2科
1科
50科
22科
60科
5科
1種
2種
97種
41種
8種
1種
15種
5種
125種
8種
10種
2種
11種
5種
682種
2,892種
2種
6種
31種
793種
8種
1種
630種
61種
2,363種
143種
クモ類 1目 43科 293種
陸・淡水産貝類 6目 47科 184種
小   計 35目 527科 8,458種
83目 678科 9,072種
植物 維管束植物 シダ植物 13目 30科 407種
種子植物 55目 175科 3,060種
小  計 68目 205科 3,467種
コケ植物 35目 102科 700種
103目 307科 4,167種
合     計 186目 985科 13,239種