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報道記録
報道年月日 2016/08/18
報道機関名 日本経済新聞
会員名 新日鐵住金㈱
タイトル 鉄鋼 価格、本格上昇には時間 東京五輪関連に動き
報道記録の内容 2016年度後半市況を読む 鉄鋼 新日鐵住金副社長 佐伯康光氏

――鋼材価格に底入れ機運が出ています。
「アジアの鋼材価格は2015年度末を底に上昇に転じた。今は当時より1トン100ドル以上高い水準で推移する。中国政府による過剰生産能力削減への期待が高まったうえ、中国の製鉄所も採算やコストを意識した販売価格をつけてきている」
――16年度下半期も基調は続きそうですか。
「市況が崩れることはないが、本格的な上昇には時間がかかる。中国政府は16年度に4500万トンの過剰能力削減を表明しているが、具体策が焦点だ。製鉄所の稼働率上昇といった数字に効果が表れるには時間がかかる。1~2年では難しい」
「世界の鉄鋼需要は東南アジア諸国連動(ASEAN)やインドなどでおおむね堅調だが、中国で大きく減る。資源安でロシアやブラジルも減り世界全体でも前年比マイナスとなる見通しだ」
――国内の需要は回復しますか。
「需要は下半期に緩やかながら回復してくる。7月以降、東京五輪関連や都市部の大型再開発案件で荷動きが出つつある。懸念を持っているのは倉庫や工場など中小規模の設備投資案件だ。非住宅着工面積は前年比でプラスに転じているが、鋼材の需要にまだつながっていない」
――円高をはじめ国内メーカーにはリスク要因も目立ちます。
「英国が欧州連合(EU)離脱を決め、先行きに不透明感が強まった。企業が慎重姿勢を強め、設備投資を控えかねない。円高が進み、製造業などの輸出産業で鋼材の需要が減る懸念もある」
「円高で輸入材が増える可能性があり、不当廉売とならないか、警戒レベルを上げていく。懸念材料が多くなり、下半期も生産・出荷をより慎重に進める必要がある。

原料価格が反発販売の上げ急務

――鋼材の値上げにどう取り組みますか。
佐伯康光副社長は「現状の価格水準では日本の鉄はままならない」と語り、危機感をあらわにする。中国発の「鉄冷え」の解消には時間がかかるが、昨年までの鋼材価格の急落は一巡した。鉄鉱石など原料価格が反発基調を強めるなか、販売価格の引き上げは待ったなしだ。
もっとも大口需要家との値上げ交渉は難航が必至だ。「流通市場で荷動きが鈍く、とても値上げを需要家に転嫁できない」(鋼材問屋)との声も多い。鋼材需要の回復は来年にずれ込みかねず、年内の追加値上げに向けた道は険しい。
「今の価格水準では高炉設備の更新、修繕のための投資がままならない。原料価格も上昇し、メーカーとして危機感を持って値上げに取り組む。5月から各品種で打ち出した販売価格の引き上げをやり遂げ、需要動向を見極めながらさらに引き上げたい。自動車メーカーなどとのひも付き交渉も難航するが、不退転の決意で臨む」
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