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報道記録
報道年月日 2021/09/05
報道機関名 日本経済新聞
会員名 鉄鋼
タイトル 建築用鋼材、10万円台に H形鋼、東京 12年9か月ぶり浮上
報道記録の内容  鉄骨造(S造)などの建物に使う建築用鋼材の取引価格が12年9カ月ぶりに1トン10万円台に浮上した。代表品種は前月比5%高い。低調だった中小ビルの着工が持ちなおしつつあり、需要が底入れした。鉄鋼メーカーの供給には限りがあり、流通市場では鋼材の需給が引き締まっている。これまでのメーカー値上げが段階的に浸透した。

 建材の代表品種で建物の柱や梁に使うH形鋼は、東京地区の問屋仲間価格が5・5×8×200×100ミリメートル品で現在1トン10万3500円前後。前月中旬と比べて5000円(5%)高く、昨年の底値(同7万6000円前後)からは2万7500円(36%)上昇した。2008年12月以来、12年9カ月ぶりに10万円の大台に乗せた。
 山形鋼の6×50ミリメートル品、みぞ形鋼の6×65×125ミリメートル品はともに1トン10万2500前後で前月中旬から5000円(5%)上がった。
 需給の逼迫が相場水準を押し上げた。建材需要を測る上で指標となる国土交通省の建築着工統計によると、建築物全体の着工床面積は直近7月まで5カ月連続で前年同月の実績を上回った。構造別にみると、形鋼類の使用量が比較的多いS造は7カ月連続で前年同月の水準を上回っている。
 これまでは大型の物流倉庫やデータセンターの増築がS造の増加をけん引してきたが、足元では中小ビルの着工も持ちなおしているもようだ。ある形鋼問屋は「中小ビルの基礎工事用にH形鋼の出荷が前年比2割ほど増えた。これから上部の建設が進めば、さらに需要が増えるはずだ」と話す。
 物流倉庫や高層ビルなどの大型案件に使う形鋼類は、鉄鋼メーカーから鉄骨加工業者(ファブリケーター)に直接供給される場合が多く、一般流通(店売り)市場を介さずに建設現場へ納入される比率が高い。対して中小ビルなどに使う一般的な形鋼類は、店売り市場から調達するケースが多い。そのため中小ビルの着工の持ち直しは、店売り市場の荷動きの回復につながりやすい。
 鉄鋼メーカーは鋼板類をはじめとする多くの鋼材で需要の増加に直面しており、形鋼類の生産量は伸びていない。電炉の定期修理や鉄スクラップ高から受注量を抑えている面もあり、H形鋼はサイズによっては短納期での調達が難しくなっている。
 日本製鉄の鋼材を扱う流通事業者でつくる「ときわ会」がまとめた7月末時点のH形鋼在庫は、全体で18万8500トンと前月末から8300トン(4%)減った。20年12月末依頼、7カ月ぶりの低水準となった。
 建築着工は例年秋以降に本格化する。今後も需要の増加とともに流通価格が上昇する公算が大きい。ただ、市場からは「鋼材価格の高騰が需要を冷やしている面も見え始めてきた」(鉄鋼商社)との声も上がる。先行してきた鋼板類に続き、形鋼類も節目となる1トン10万円を超えたことで、市場では高値に対する警戒感が広がる。
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