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報道記録
報道年月日 2021/10/16
報道機関名 日本経済新聞
会員名 脱炭素
タイトル データで読む 地域再生 バイオマス林業再興の芽
報道記録の内容  バイオマス発電の存在感が地域で増している。国内の設備容量は5年で2.5倍になった。間伐材を主な燃料とするだけに環境負荷を低減させる効果が見込めるほか、従事者減少や産業競争力の低下で山林荒廃が進む林業にとって、再興につながるヒントとなる。
 事業所が発電した電力を電力会社が一定の価格で買い取る「固定価格買い取り制度(FIT)で認定されたバイオマス発電容量は、2020年末時点で全国402万キロワット。15年の160万キロワットから拡大した。発電に使われる燃料は森林から出る鋼材を加工した木質チップや農作物の残渣などが48%で最多。このほか木質以外の一般廃棄物(27%)や建築廃材(12%)、間伐材由来の未利用木質(11%)、メタン発酵ガス(2%)が使われる。
 発電容量を都道府県別でみると、トップは愛知県で37万キロワット。19年、中部電力グループ会社などが出資した会社が運営するCEPO半田バイオマス発電所が稼働したことで、バイオマス先進県となった。
 30万キロワットで2位となった山口県では01年度、全国に先駆けて「やまぐち森林バイオマスエネルギー・プラン」を策定。森林バイオマスの供給から再生可能エネルギーへの転換、利用まで一貫したシステムを県が示し、官民による利用が進む。木材だけでなく、15年には航空レーザーなどを活用して竹林の分布状況や資源量などを把握する実証実験も実施。竹材を燃料として活用する道を探っている。以下、茨城県、福岡県の順。最下位は香川県で発電容量は愛知県の145分の1の2560キロワットにとどまる。
 国の新しいエネルギー基本計画案では、30年度に電源全体に占める再エネの構成比を現行目標の22~24%から36~38%に高めることを狙う。再エネ市場は従来、太陽光発電がけん引してきたが、パネル設置に対し、崩落や景観悪化を懸念する声が高まりつつあることで、設置規制に乗り出す自治体も増えてきた。
 一方、バイオマス発電の比率は、NPO法人環境エネルギー製作所によると、依然として3%程度にすぎない。太陽光など他の再エネと異なり、燃料を燃やして発電する以上、温暖化ガス削減効果が乏しいとの指摘もある。しかし、森林が国土の7割を占める日本においては、エネルギー供給の多様化といった側面だけでなく、森林再整備につながり、林業の再活性化への道も開ける。
 15年比で発電容量を19倍に増やした山形県では、酒田市内の工業団地に18年、住友商事グループ会社を通じ東北最大級となる5万キロワットのバイオマス発電所を稼働させた。燃料の半数近くは山形県産を中心とした国産木質チップ。処理が難しかった集成材製造時の端材を「売れる燃料」とすることなどで、林業の収益強化にもつなげる。
 ヒノキの産地として知られる岡山県真庭市では、同様に端材をチップとし、処理コストを年間1億円削減した。15年に市内でバイオマス発電所が稼働。資源の効率的な利用による「循環型社会」構築を目指し、市内のエネルギー自給率を100%にする目標を掲げる。21年時点のエネルギー自給率は32%。14年比で約20ポイント上昇した。
 バイオマス発電所は林業従事者の雇用を広げる役割も果たす。九州電力子会社が20年5月に「ふくおか木質バイオマス発電所」を稼働させた福岡県筑前町では、計70人程度の雇用創出につながる見通し。間伐で森林に放置された未利用木材の集荷や運搬、燃料加工を担う。

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