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報道記録
報道年月日 2022/02/02
報道機関名 日本経済新聞、朝日新聞
会員名 脱炭素
タイトル 排出量削減目標 未達に罰則なし 取引市場、脱炭素推進へ経産省案
報道記録の内容  【日本経済新聞】
 経済産業省は1日、企業が二酸化炭素(CO2)の排出量を売買できる取引市場の創設に向けた基本構想を発表した。排出削減を促す狙いだが、企業の参加は任意で、各社が定める削減目標が未達になっても罰則はない。排出可能量を示して削減を義務付ける欧州とは異なり、実効性が課題だ。目標を設けていない企業が参加する利点も見えにくい。日本は制度整備で遅れており、削減が進まなければ国際競争力の低下を招く懸念がある。

 CO2の排出に値付けをして削減を促す取り組みは「カーボンプライシング」と呼ばれる。排出量取引と、企業の排出量に応じて課税額を決める炭素税の2つが世界では主流だ。本格導入に向け、経産省と環境省がそれぞれ検討してきた。
 岸田文雄首相は1月、脱炭素の取り組みで経済成長をめざす「クリーンエネルギー戦略」の今夏の策定に向け、カーボンプライシングを検討するよう指示。制度の全体像はまだみえないが、経産省は先行する形で、排出量取引を2023年4月に本格開始することを目指している。
 1日に公表した構想では、脱炭素に取り組む企業で構成する仕組み「GX(グリーントランスフォーメーション)リーグ」をつくり、これに参加する企業が排出量を取引できるようにする。構想に賛同する企業を募って制度を詰め、今秋に試験導入する。
 参加企業は23~30年の間で中段階の削減目標を決め、その目標より削減できた分を市場で売却できる。政府は30年度の温暖化ガス排出量を13年度比で46%以上減らす目標を掲げている。企業にはこの水準を上回る目標の設定を求める方向だ。
 目標の達成に削減量が不足する場合は市場でその分を購入してもらう。ただ、仮に排出量を購入せず、削減目標を達成できなくても罰則はない。一律の規制に慎重な産業界への配慮がにじむ。
 京都大学大学院の諸富徹教授は「規制ではないため企業が市場で排出量を買う必要はない。削減効果があるとは思えない」と指摘する。削減目標を設定していない企業にとっては市場に参加する意味は薄い。
 同省は参加条件に①50年の脱炭素化②30年の排出削減目標を掲げ進捗状況を毎年公表③部品を調達する企業の脱炭素化を支援―などを挙げる。
 同省によると、50年の脱炭素を掲げる日本企業は200社以上あり、排出量の多い鉄鋼や電力、石油などの主要企業も名を連ねる。これらが仮にすべて参加すれば日本のエネルギー起源の総排出量の5割前後をカバーできるとみる。
 規制で縛れない中、期待するのはESG(環境・社会・企業統治)投資の広がりなど金融界の圧力だ。世界では、脱炭素に後ろ向きと判断された企業は融資を受けづらくなっている。参加を促すため、排出量取引などを通じ脱炭素化が進んだ企業を補助金や政府調達で優遇することも検討する。
 実効性を伴うかの懸念は経産省も認識している。今回の基本構想には、取り組みが不十分であれば、参加の義務といった規制への移行も視野に入れると盛り込んだ。もっとも30年度まで10年を切った今、貴重な時間を空費する恐れはある。
 欧州連合(EU)の排出量取引では排出可能な量や、削減を義務付ける対象を当局が決めている。20年は発電所や工場など排出量の多い1万1000カ所の施設や600の航空会社が対象だった。現在は年2.2%ずつの排出削減を義務付けている。その分に届かなければ1トンあたり100ユーロの罰金を払う。
 今回の経産省の案は、参加の可否や目標も企業が決めるため、全体の削減量が見通しづらい。環境省では排出量取引は欧州のような規制が必要との意見が強い。欧州などと比べて水準の低い炭素税の見直しをカーボンプライシングの軸として検討している。
 世界では2つの手法を組み合わせて企業の脱炭素を促す制度が整ってきている。先行するEUでは、域内で脱炭素のコストがかかる企業と、規制の緩い地域の企業の間で不公平が生まれるとして、事実上の関税にあたる国境炭素税で調整する仕組みも検討している。脱炭素の加速に向けて日本も早期に制度の全体像をまとめる必要がある。


【朝日新聞】
 二酸化炭素(CO2)の排出削減を促す「日本版排出量取引」が2023年度にスタートする。再生可能エネルギーの導入などで減ったものを企業かんで売買する。企業の自主的な取組が前提で参加は自由だ。今回は本格導入に向けた「試金石」となる。いずれは欧州のように、企業ごとに排出量の上限を決めるような仕組みも想定される。
 経済産業省が1日、脱炭素に積極的な企業による「GX(グリーントランスフォーメーション)リーグ」の基本構想を公表した。参加企業は政府が掲げる50年の脱炭素実現に賛同し、30年度時点の削減目標も示す。商品の製造から廃棄までの排出量を表示する「カーボンフットプリント」などを進め、削減目標の進み具合を毎年公表する。経産省は、先進的な企業を補助金などで優遇することも検討している。
 排出量取引に向け「カーボン・クレジット市場」もつくる。企業が省エネ機器の導入や再生エネの利用で目標を上回って削減した分をクレジットとして国が認証する。億票を達成できなかった企業は、不足分に見合うクレジットを買えるようにする。22年秋に実証試験を始め、23年4月以降の運用開始をめざす。経産省は大企業を中心に500社程度の参加を見込む。
 経産省は企業の負担増に配慮し、自主的な制度としてスタートする。幹部は今後の方向性について、「脱炭素の実現には企業間で排出量を調整する仕組みが必要だ。いずれ排出量取引に帰着するのは避けられない」という。
 欧州では排出量取引が始まっている。特定の産業を対象にCO2など温室効果ガスの排出枠を企業に割当て、超過した場合は枠を購入するものだ。環境規制が緩い国からの輸入品に事実上課税する「炭素国境調整措置」と呼ばれる仕組みも検討している。日本でも対応しなければ企業が競争力を失うおそれがあり、経産省は脱炭素化の取組を加速させたい考えだ。

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