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報道記録
報道年月日 2022/02/05
報道機関名 中国新聞
会員名 脱炭素
タイトル 脱炭素に挑む 周南コンビナートから5
報道記録の内容  事業のために大量の二酸化炭素を出している周南コンビナート。総合化学メーカーの東ソーの土井亨取締役上席執行役員研究企画部長は「ここで生まれる製品で、脱炭素を実現できないか」と考える。見せてくれたのはCO2を吸収する溶液。2022年度中の発売を目指す。「本業のものづくりで脱炭素に貢献する意義は大きい」と説く。
 南陽事業所で開発した。火力発電所の排ガスなどのCO2を吸収し、加熱すると切り離す機能がある。CO2を出しても、可能な限り吸収して排出量を実質ゼロにするカーボンニュートラルの達成に欠かせない技術。回収したCO2は、ポリウレタンの原料などとして利用する。溶液は、薬品原料などとして1967年からつくるアミンの研究を続けた末に完成した。CO2回収向けは世界で強まった脱炭素の流れを受けて開発。後発ながら、少ない加熱でCO2を切り離せる強みを持たせた。「不断にアミンを改良していたからいい新製品ができた」土井取締役は誇る。
 炭素は「負債」になりつつある。欧州の各国は排出量に応じた炭素税を設けている。さらに欧州連合(EU)は未対策の国からの輸入品に対する同水準の関税の導入を検討。EUや中国は企業に排出削減を義務付け、未達成の場合は余力のある企業から排出枠を買う制度を始めている。
 日本では経団連が炭素税の導入に慎重姿勢を示している。ただ世界の潮流を考えると、日本企業もいずれ向き合う可能性がある。例えばフランスの税率を単純に東ソーに適用した場合、税額は年約430億円。21年3月期の単体の経常利益の6割に当たる。「社外だけでなく、社内からも製品に高い環境性能を求められる」研究畑を歩んできた土井取締役は近年、急激な変化を感じている。
 コンビナートの他の企業も、脱炭素につながる製品を生み出している。ゴム製品を手掛ける日本ゼオン徳山工場が15年に世界で初めて量産を始めた炭素材料「単層カーボンナノチューブ(CNT)もその1つだ。
 炭素原子が結びついた微細な粉で、材料も形も鉛筆の芯を削ったものに似ている。他の素材に混ぜて使い、蓄電機器や送電線の効率を高めて電気の無駄を減らしたり、自動車の構造材を軽くして燃料消費を抑えたりする。
 しかし、ルクセンブルクの他社も単層CNTの量産を後から始めた。性能はゼオン製に劣るが、安さで世界シェアをほぼ独占された。日本ゼオンの上島貢CNT事業推進部長は「自社で複合材料をつくると同時に、他社にサンプルを提供して普及を図りたい」と巻き返しを期す。
 住宅の断熱材の素材を手掛ける東ソー、太陽光発電機器のリサイクルを進めるトクヤマ…。コンビナート各社は、脱炭素に向けた製品増産やサービスの強化を相次いで打ち出す。環境対応を、コストではなく、商機ととらえる動きが芽生えている。


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