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報道年月日 |
2022/02/21 |
報道機関名 |
日本経済新聞 |
会員名 |
脱炭素 |
タイトル |
CO2貯留に「有望地」 実用化には高いハードル |
報道記録の内容 |
火力発電所などが排出する二酸化炭素(CO2)を回収し、地下に封じ込める「炭素回収・貯留」。2050年の脱炭素へカギを握るとされ、政府は技術開発を本格化させるが、日本周辺に適地が見つかっているわけではない。そうしたなか有力な研究者が日本海沿岸に有望な地層があると唱えている。温暖化対策の救世主になるのか。
「北海道から山陰にかけて日本海沿岸に分布する『グリーンタフ(緑の凝灰岩)層』には、日本が排出するCO2の数百~千年分以上を貯留する能力がある」
東京大学工学系研究科の加藤泰浩教諭らのチームがこう唱えている。加藤教授は11年、太平洋の海底でレアアース(希土類)を大量に含む泥を発見したことで知られる。レアアースはハイテク製品に欠かせない素材だ。
CO2貯留とレアアース泥は無縁のようにみえるが、実は関係が深い。チームの中村謙太郎准教授は「火山由来の鉱物がCO2を大量に貯留することがわかってきた。レアアース泥も海底の火山活動が生成に深くかかわり、同じ根っこから生まれた成果」と話す。
日本海沿岸のグリーンタフ層は、火山灰が積もってできた凝灰岩層が長さ1200キロ以上にわたり弧状に延びている。約1500万年前、列島が大陸から離れて日本海が拡大したとき、熱水の作用により生まれた。
とりわけ有望なのが島根県周辺の「牛切層」という地層だ。高谷雄太郎・東大准教授が凝灰岩を採取して実験し、高い貯留能力を確かめた。
ここに半径1.5キロメートル厚さ200メートルの「貯留層」を造れば1カ所あたり1億5千万トンのCO2を貯留でき、グリーンタフ層全体で適地は数百か所以上あると推定している。貯留層が10カ所あれば30年ごろに国内の発電所から出るCO2の5~6年分を貯留できる。
脱炭素に向け政府はCO2貯留の実現へ舵を切った。21年10月に閣議決定したエネルギー基本計画で「分離・回収やコスト低減に向けた技術開発を進める」とし、萩生田光一経済産業相も「30年までに導入に取り組む」と表明した。
だが実現の見通しが立っているわけではない。経済産業省は19年まで北海道・苫小牧市沖で実証試験に取り組んだが、後に続く計画はない。同省は1月下旬の有識者検討会で「約160億トンの貯留可能量が推定される」と報告したが、候補地を明示していない。
学術的にはこの15年ほどの研究で、玄武岩など火山由来の岩石がCO2を吸収しやすい性質が明らかになってきた。岩石中のカルシウムやマグネシウム、鉄などがCO2と反応し、炭酸カルシウムなどに変化して固着するためとみられる。
アイスランドでは玄武岩が短期間でCO2を固定したと報告され、同国の産学がスイスのCO2貯留専門の企業と組んで事業化に動き出した。
東大チームも05年ごろから凝灰岩に注目して研究を続けてきた。「グリーンタフ層は厚い堆積層に覆われCO2が漏れにくい。日本海沿岸には火力発電所が多いのも利点」(高谷准教授)
ただ地質学的に有望でも実用化までは多くのハードルが待ち受ける。実際に大量のCO2を注入でき、地震などを起こさず安定して貯留できるかどうか。データを集め周辺の自治体や住民、漁業関係者らの理解を得ることが欠かせない。
コスト面でも課題が多い。排ガスからCO2を分離・回収する費用、輸送する費用などを合わせるとCO2の処理費用は1トンあたり8千~1万円程度とされる。国内の火力発電全てに適用すれば数兆円規模になる。
東北大学環境科学研究科の土屋範芳教授(環境地質学)は「分離・回収や輸送でCO2を排出するようでは本末転倒で、実現への壁は高い。ただし貯留層を探すのならカルシウムやマグネシウムなどを含む地層は理にかなう」と話す。
東大チームも「事業化できるかや経済性についてはエンジニアリング面での検討が必要」
(加藤教授)とし、今後、経産省などに研究プロジェクトとして取り組むように働きかける考えだ。
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