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報道年月日 |
2022/03/20 |
報道機関名 |
日本経済新聞 |
会員名 |
脱炭素 |
タイトル |
廃ペットボトル、完全再生 |
報道記録の内容 |
脱炭素社会に向けて、大手飲料メーカーなどが使用済みペットボトルからペットボトルを再生する完全リサイクル技術の確立を急いでいる。従来技術では繰り返し使うと品質が落ちるなどの理由で、回収してもペットボトルの再生に回るのは一部だった。キリンホールディングスなどは化学処理する再生技術を使う。2027年までに専用工場の稼働を目指す。米飲料・食品大手ペプシコなどは微生物の酵素を使う技術を開発する。世界的な環境規制への対応もにらみ開発競争が激しくなっている。
キリンHDやサントリーホールディングスなど国内大手飲料メーカーなども「ボトルtoボトル」推進につながる目標を掲げる。日本のペットボトル回収率は90%超と世界屈指の高さだが、実はペットボトルに再生されているのはごく一部だ。
このためペットボトルの多くは石油由来だ。脱炭素社会に向かう中、今後もペットボトルを使い続けるには「ボトルtoボトル」を確立する必要がある。ネックになるのは、再生樹脂の製造技術だ。これまでの再生樹脂の多くは粉砕後に熱できれいにする機械的な「メカニカルリサイクル」で作ってきた。この再生樹脂でペットボトルの再生を繰り返すと、「粘度が下がって劣化していくほか、無職透明でなくなるなどの品質低下が起きる」(キリンHDパッケージイノベーション研究所の大久保辰則氏)。
ボトルtoボトルの割合が1割強の現状では問題にならないが、割合が高まると問題が表面化する可能性がある。期待されている技術の一つが化学的なケミカルリサイクルだ。無数に分子がつながってできたペット樹脂を化学的な処理で分子レベルまで分解して、樹脂を作り直す。石油由来の樹脂と同品質のペットボトルが再生できる。
キリンHDは三菱ケミカルと共同でケミカルリサイクル技術の開発を進める。キリンは19年2月にまとめた「プラスチックポリシー」で日本国内で再生樹脂の使用割合を27年までに50%に高める目標を定めた。ペットボトルの原料樹脂を製造する三菱ケミカルの知見を生かして、ケミカルリサイクル技術を確立して、27年までに工場を稼働させる予定だ。製造した再生樹脂を自社製品に使うほか、外販することも検討する。
日本で唯一、ケミカルリサイクルの工場を21年10月に本格稼働させたのが、日本環境設計子会社のペットリファインテクノロジーだ。川崎市にある工場では500ミリリットルのペットボトル(21グラム)約10億本に相当する2万2000トンの再生樹脂を作れる。アサヒグループホールディングス傘下のアサヒ飲料などに再生樹脂を供給している。石油由来の樹脂に比べて、二酸化炭素排出を47%減らせるという。原料の72%以上は使用済みペットボトルだが、品質の安定化とコストを抑えるために、一部石油由来の原料を使っており、技術開発を進める。
日本コカ・コーラは「市中のペットボトルを回収して、100%を飲料容器として再生される状態を目指していく。ケミカルリサイクルなども鍵になってくる」(広報)としている。コカ・コーラボトラーズジャパンは台湾の大手樹脂メーカーの遠東新世紀が開発したケミカルリサイクル技術を使ったペットボトルの製品化に取り組む。遠東新世紀は使用済みのペットボトルやエステルから、ペットボトル原料となる高純度のテレフタル酸を作る技術を開発した。
環境に低負荷の技術でボトルtoボトルに取り組むのは、フランスのスタートアップ「カービオス」だ。微生物由来の酵素の働きで、使用済みペットボトルを分解し、樹脂を再生する。カービオスとともに実用化を目指すコンソーシアム(企業連合)にはペプシコやスイスの食品大手ネスレ子会社のネスレウォーターズ、サントリー食品インターナショナルの欧州法人も参加している。
20年に英科学誌ネイチャーに載った記事によると、10時間で90%以上の樹脂を酵素が分解した。21年秋に年間100トン処理できる実証プラントを稼働させた。2月23日には「ペットボトル20億本に相当する年間5万トンを処理できる世界初の商業プラントを25年にフランス国内で稼働させる」と発表した。同社は「プラスチックや繊維の循環社会の世界基準になることを目指す」としている。ボトルtoボトルのリサイクル技術の開発は進むが、課題はコストだ。メカニカルリサイクルが中心の現在の再生樹脂も脱炭素の流れを受けて、飲料以外の分野からも引き合いが多く「奪い合いが起きて、価格が上昇している」(大手飲料メーカー)という。
再生樹脂100%のペットボトルの場合、石油由来の新しい樹脂に比べてコストが1割前後は高くなるとされる。足元では原油価格の高騰が進んでおり、再生樹脂には追い風となる。ケミカルやバイオリサイクルでどこまでコストを下げられるかがか普及のカギになりそうだ。
ペットボトルの完全リサイクルは、脱炭素社会と海洋汚染の防止などの環境保護の実現に不可欠な技術だ。市場調査データを扱うグローバルインフォメーションによると、世界の2020年のペットボトルの使用量は1310万トンだ。500ミリリットルのペットボトル換算で6200億本にのぼる。
特に海洋ごみの中でペットボトルの存在は大きい。環境省の調査(16年度)によると、日本の10地点に漂着したプラスチックごみの個数ベースで約4割、重量ベースで7・3%が飲料用ボトルだった。海洋プラスチックごみは国際的な課題だ。
欧州連合(EU)で19年7月に発効した「使い捨てプラスチックに関する指令」では、海辺のごみで多いペットボトルなど10品目を規制対象としている。ペットボトルは、29年までに回収率90%、30年には再生樹脂を30%使用することを求めている。
日本は回収率もリサイクル率も欧米に比べ高いものの、ボトルtoボトルは道半ばだ。PETボトルリサイクル推進協議会によると、日本で販売されたペットボトルは約55万トン(20年度)で、国内で再資源化されたのは約34万トン。ほかは輸出などに回った。さらに、再生樹脂のほとんどはいずれ焼却される。
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