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| 報道年月日 |
2015/04/21 |
| 報道機関名 |
読売新聞 |
| 会員名 |
やまぐちエコ市場事務局 |
| タイトル |
硫黄島 地熱発電で水素製造 鹿児島 川崎重工など計画 東京五輪までの実用化目指す |
| 報道記録の内容 |
水素エネルギーが注目を集める中、火山を抱える鹿児島県三島村の硫黄島で地熱発電を利用し、液体水素を製造する計画が始まる。川崎重工業と大林組が実証プラントの建設に向け、今年度から掘削調査に入る。２０２０年の東京五輪・パラリンピックは選手村での水素エネルギーの活用を掲げており、それまでの実用化を目指す。
液体水素は主に燃料電池車の燃料として使われ、二酸化炭素（ＣＯ２）を出さないクリーンエネルギーとして注目されている。水素の代表的な製造方法は水の電気分解だが、石油などの化石燃料を電源に使うため、ＣＯ２の削減効果は十分ではないという指摘がある。
そこで、川崎重工業などは地熱発電による電気で水素の製造を計画。硫黄島の北東部にある活火山の硫黄岳（７０３メートル）に着目した。山頂付近に多数の噴気孔があり、９００度程度の高温の火山ガスが常時噴き出す。「通常の地熱発電所と違い、深く掘削しなくても高温の火山ガスが得られる。国内でも有数の場所」（川崎重工業）という。
計画では、火山ガスで水を沸騰させ、蒸気でタービンを回して発電する。水素を取り出すための水は海水を淡水化して使う。製造した水素ガスはマイナス２５３度に冷却して液化し、タンクに貯蔵。フェリーで島外にコンテナ輸送する。
同社は国内で初めて、液体水素の製造設備を開発した。硫黄島では１３年度から基礎データの収集を始め、１日１８トンの液体水素の製造が可能という。燃料電池車で３６００台分を賄える計算になる。今年度はボーリング調査を行い、早ければ１６年度から実証プラントの整備に入りたい考えだ。
硫黄島地区の安永孝区長（６３）は「働く場所ができれば若者が戻り、硫黄鉱山で働く人が大勢いた昔のように活気づく」と期待する。
安全面 島民不安も
ただ、噴火の可能性を否定できない硫黄岳の麓で液体水素を製造するには、安全性確保などの課題もある。島民の間には「水素の製造過程で爆発するかもしれない」と不安視する声があり、大山辰夫村長は「夢のある話だが、住民の理解が不可欠。小さな情報でも発信して」と要望する。
川崎重工業は気象庁などの情報から「現時点で硫黄岳は小康状態を保っており、大規模噴火のリスクは低い」と分析。その上で火山情報を随時得られるよう関係機関との連絡体制を整備し、火山状況が変化したり、災害が発生したりした時には速やかに設備の運転を停止させる、としている。
同社市場開発部の沢崎正明部長は「貯蔵タンクや輸送コンテナの開発など実績を重ねている。他の水素設備と同様、安全性は十分確保できる」と説明。「東京五輪の選手村で、硫黄島産の液体水素を使った燃料電池バスを走らせたい」と話している。
【硫黄島】 鹿児島県三島村の有人３島の一つ。九州本土最南端の佐多岬から南西約４０キロの東シナ海に浮かぶ。周囲１９．１キロ、面積１１．７平方キロ、人口約１１０人。明治以降、硫黄鉱山で栄えたが、硫黄の需要減に伴って１９６４年に閉山。現在は漁業と畜産業が主産業となっている。太平洋戦争の激戦地だった硫黄島は東京都小笠原村の島。 |
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