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| 報道年月日 |
2015/07/02 |
| 報道機関名 |
日本経済新聞 |
| 会員名 |
やまぐちエコ市場事務局 |
| タイトル |
レアアース 中国依存再び 国際価格急落、生産地拡大に逆風 輸入増の日本、リスク上昇 |
| 報道記録の内容 |
自動車部品などに使うレアアースの国際価格が急落した。高性能磁石の原料は４月比で２～３割安い。尖閣諸島を巡る日本と中国の緊張を背景に高騰した２０１０年以前の水準に戻った。世界貿易機関（ＷＴＯ）から協定違反とされた中国が、輸出枠や輸出税を撤廃した。価格の下げが響いて米国の生産者は破産法の適用を申請し、再び中国依存が強まっている。
過剰投資が重荷
「調達で中国比率が増えるとリスクが高まる」。合金鉄大手、新日本電工の幹部は指摘する。
同社は関連会社を通じ、米国のレアアース生産会社モリコープから磁石の原料を輸入している。中国の輸出規制が厳しくなり、１３年にモリコープからの調達を拡大していた。そのモリコープは６月２５日、日本の民事再生法に相当する米連邦破産法１１条の適用を米国の裁判所に申請したと発表した。
新日本電工はモリコープの出荷が止まっても当面は影響がないとするものの、将来中国の影響が再び強まると警戒する。
１０～１１年のレアアース価格の急騰直後、中国以外に生産地を広げる計画は２００以上あった。現在あるのはモリコープやオーストラリアの資源会社ライナスなど４件だ。
モリコープはファンドから出資を集め、生産設備の整備や増産を進めた。中国の輸出規制で現在の１０倍を超えていた１１年の価格が計画の軸にあった。価格の下落で投資が重荷となった。
ライナスも債務返済を１６年６月まで延長した。豪州産のレアアースを製錬する工場は「稼働率が上がっている」（経済産業省）といい、３月末の時点でフリーキャッシュフロー（純現金収支）は黒字化した。だが価格は当初の想定を下回り、人件費などを切り詰めているとみられている。
昨年１０月には、豪州のライナス本社からスタインメッツ最高コマーシャル責任者（ＣＣＯ）が来日した。同氏と商談に臨んだ日本企業によると、スポット（随時）ではなく、３カ月や６カ月という期間の契約を提案したという。
だが年内値上がりはないとの見方が強い。先安観もある中で、ライナスが目指す長期契約の獲得には逆風が吹き付ける。
住友商事が１２年からカザフスタンで進めるレアアースの回収事業も稼働にこぎつけられない。政府系の石油天然ガス・金属鉱物資源機構（ＪＯＧＭＥＣ）から支援された国家的事業だが、価格交渉の難航や技術者の不足に見舞われている。
中国産レアアースは「安くて、品質も需要家が求める水準」（商社のマテリアル・トレイディング・カンパニー＝東京・港）。レアアースの価格が下がり続けても、中国産が市場で生き残る可能性は強い。日本企業は再び中国依存へと向かう。
日立金属は電気自動車（ＥＶ）などのモーター向けに、レアアースを用いた磁石を製造する。中国の輸出規制に対応し米国の工場で１３年から磁石の生産を始めた。だが、既に米国で一部の生産を停止し、最近中国の磁石メーカーと製造販売の合弁会社の設立を決めた。
世界の関心薄く
レアアースの再利用も下火になった。ガラスの研磨剤などに使うセリウム。価格が１キロ１５０ドルに高騰した当時、ガラスのスクラップから取り出すリサイクルが進んだ。回収コストは同７００～８００円かかる。現在セリウムの価格は２ドル前後まで下がり「リサイクルをやる意味がなくなった」（専門商社のサムウッド＝東京・千代田）。
１４年の日本のレアアースの輸入量は約２万２千トン。最も少なかった１２年に比べて６０％増えた。フランスなどを経由したものも含め中国産が８～９割を占めるとされる。
世界的な調達懸念も薄らいだ。毎年３月、カナダのトロントで世界的な鉱山会議が開催される。２万４千人が訪れた会場に今年、「レアアースを取り上げたブースはなかった」（専門商社アドバンストマテリアルジャパンの中村繁夫社長）。
中国は国内のレアアース生産会社を統合し違法採掘の取り締まりも強める。中国が国際的な貿易ルールに従っても、世界のレアアース価格が再び上昇する懸念はぬぐえない。 |
| 関連URL |
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