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報道年月日 |
2015/12/25 |
報道機関名 |
日本経済新聞 |
会員名 |
やまぐちエコ市場事務局 |
タイトル |
脱・石炭火力 パリ協定迫る 原発事故で高依存 日本、取り残される恐れ |
報道記録の内容 |
温暖化ガスをたくさん出す石炭火力発電に世界中から厳しい視線が注がれている。欧米を中心に全廃したり削減したりする動きが盛んだ。投資家たちも将来の損失を招く恐れがあるとそっぽを向くようになってきた。だが、日本は東京電力福島第1原子力発電所事故の影響で石炭火力への既存度が高く、時代の流れから取り残される。2020年以降の温暖化対策を求めたパリ協定の採択で、石炭包囲網が狭まる公算が大きい。
石炭火力は石油火力や原発に比べると、安く安全で安定的な電源として各国で重宝されてきたエネルギー源だ。ただ、世界が温暖化対策に取り組むようになってからは、風向きが変わってきた。
CO2排出量多く
1キロワット時当たりの二酸化炭素(CO2)排出量を示す「排出係数」という値がある。高ければそれだけCO2排出量が多い。石炭火力は従来型では0.86、日本でも多く導入されている新型で0.84と、最新鋭の液化天然ガス(LNG)火力の2倍超もある。日本企業の技術を結集した石炭をガス化する最新鋭の「石炭ガス化複合発電(IGCC)」でも1.7倍超だ。
異常気象が増えるなど温暖化の影響が著しいことから、欧州では脱石炭を急ぐべきだという認識が強い。英国が26年までに石炭火力を全廃すると決め、オランダでは議会が段階的に閉鎖する法案を可決した。温暖化ガスの二大大国である米国と中国も脱石炭への動きを見せている。「2度目標」のほかに「1.5度に抑えるよう努力」するよう求めた。パリ協定が世界的な石炭離れに拍車をかけそうだ。
価格が安いという石炭火力のメリットも揺らぎ始めた。
企業などが排出する温暖化ガスに価格を付ける「カーボンプライシング」という動きがある。代表的な例は排出量に高い税金をかけるやり方で、欧州では一般的だ。
排出量に価格をつける動きに敏感に反応したのが金融界。化石燃料から投資を引き揚げる「ダイベストメント(投資撤退)」が広がる。パリ協定を採択した第21回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP21)の開催中、環境保護団体などによる調査で、投資を引き揚げたり削減したりすると表明した投資家らの数は500団体、資産規模は約3兆4千億ドル(約420兆円)に上ったことがわかった。
主要国の金融当局や国際通貨基金(IMF)などで構成する金融安定理事会(FSB)も11月、化石燃料の将来的な危険性を判断する基準づくりを始めた。大和総研主席研究員の河口真理子さんは「気候変動に関心の高い有力な投資家ほど石炭を『座礁資産』と呼び、危険性が高い投資という認識を持つ」と指摘する。
国内では1990年以降、新設の石炭火力の稼働が増えた。97年に温暖化ガスの排出削減を先進国に義務付けた京都議定書が発効したことで、CO2の排出量が多い石炭火力が問題視された。09年には福島県いわき市の計画が中止に追い込まれるなど、しばらく新設計画がゼロの状態が続いた。
国内増設目白押し
状況が一変したのが、11年3月の福島第1原発事故だ。石炭火力の安さと安定的な面が注目され、重要な電源として再び浮上した。13年度の石炭火力が全電源の中に占める割合は30%と、震災直前の10年度より5ポイントも増えた。原発の稼働が見通せないことから新規参入組も含め電力各社は30年までに43基、発電量で計2000万キロワットを超える新増設計画を予定する。
世界的な石炭包囲網が敷かれるなか、日本の対策は遅れがち。環境省は6月の山口県宇部市の計画など計4件の新設計画に対し、環境影響評価(アセスメント)法で「是認できない」と異議を唱えたが、政府内に電力の安定供給を守ることや電気料金を抑えるべきだという声が根強く、石炭火力を根本から抑制する制度の導入には及び腰だ。
政府は30年の電源構成で石炭火力を26%までとし、電力会社に対し26%内に抑えるためにどうすればよいかを考えるよう求めるのにとどめた。
環境省の審議会で委員を務める福岡大教授の浅野直人さんは「長期的な視野に立つならコストや安定的な面でも石炭より(太陽光や風力などの)再生可能エネルギーの方が優位になる」と予測する。経済学者の東京大教授の伊藤元重さんは「世界的な流れをくめば、将来的には炭素税など経済的な制度を浸透させなければならない」と主張する。
温暖化対策では政府は50年に現在より80%減とする長期目標を12年に閣議決定している。この目標を達成するためには石炭火力の新増設は難しい。仮にCO2を回収し地中にとじ込める「CCS」と呼ぶ先端技術を実用化できても、導入コストが高くつく課題は残る。石炭火力が生き残る道は限りなく険しい。
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