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報道記録
報道年月日 2016/03/24
報道機関名 日本経済新聞
会員名 やまぐちエコ市場事務局
タイトル 木材エネルギー利用の影で(下)小規模発電に採算の壁 廃熱利用が不可欠に
報道記録の内容  「効率的な発電をすることは現時点では難しいだろう」。合板メーカー、林ベニヤ産業(大阪市)の内藤和行社長は話す。舞鶴工場(京都府舞鶴市)の敷地内にバイオマス発電所の建設を計画していた。だが、収支を検討した結果、一旦計画を中断することにした。
 採算が合わない
 計画では発電所を年間320日以上稼働させなければ採算があわない。同じ敷地内の合板工場の稼働は年261日。ここから出る端材を原料としたチップに加え、1万4000トンの燃料が新しく必要となる。
 発電能力は2000キロワット程度の計画だが、「採算がとれるようにするには5000キロワット程度は必要ではないか」(内藤社長)。外部から調達する燃料の量も増えるが、調達はそう簡単ではない。
 木質バイオマス発電所は発電能力が小さいと運営にかかる費用が大きくなる。燃料が集まらなければ発電能力を上げられず、能力を高めないと利益を上げることが難しい──。木質バイオマス発電所が抱える大きなジレンマだ。
 再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)が始まった2012年以降、15年9月までに導入された発電設備のうち太陽光が9割。一方、木質バイオマスは0.9%の21万8000キロワットにとどまる。
 太陽光はほかの再生エネと比べて開発期間が短い。住宅用で2~3カ月、発電能力が1000キロワットを超えるメガソーラーも1年程度で稼働する。バイオマスは資源量や環境への影響の調査、建設などで事業開始まで4~5年程度かかることもある。太陽光や風力と異なり、燃料も必要になる。
 普及に壁が多い木質バイオマス発電だが、地方の木材産業活性化のカギを握る存在でもある。千葉大学の倉阪秀史教授は「地域に小規模発電所が増えれば、雇用など地方創生につながる」と指摘する。
 2000キロワット未満上げ
 対策も出てきた。固定価格買い取り制度は未利用木材を燃料とする場合、発電能力が2000キロワット未満で1キロワット時32円から40円に引き上げた。2000キロワット以上の32円と差をつけて小規模の発電所建設を促している。
 バイオマス発電の先進国、ドイツは既に小型発電所でも収益が出る仕組みができあがりつつある。廃熱を活用して果実や野菜のハウス栽培の熱源とする動きが盛んだ。
 日本でもZEエナジー(東京・港)が長野県安曇野市の発電所で出た廃熱をトマトを育てる工場で使う事業を始める。松下康平社長は「地域特性に合わせて熱を有効に使う」。製材大手、トーセン(栃木県矢板市)は運営する発電所向けで余った燃料をマンゴーのビニールハウスやウナギの養殖向けの熱をつくるボイラーで使いコスト削減につなげようとしている。
 名古屋大学の高村ゆかり教授は「熱利用を含めて地域で発電を産業振興策として位置づける必要がある」と話す。木材を効率よく使うには、バイオマス発電をうまく活用する仕組みの重要性が高まっている。
 ▼再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度 太陽光や風力、地熱やバイオマスを燃料に使い発電した場合、一定の価格で電力会社が買い取る。10~20年間、決まった価格で買い取る。太陽光は、発電能力が10キロワット以上の場合、1キロワット時27円。バイオマスは未利用木材を使うとき、発電能力が2000キロワット未満で40円、2000キロワット以上で32円。
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