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報道年月日 |
2021/09/17 |
報道機関名 |
日本経済新聞 |
会員名 |
日本製鉄 |
タイトル |
鉄鋼、脱炭素へ電炉シフト |
報道記録の内容 |
世界の鉄鋼大手が二酸化炭素(CO2)排出量が少ない電炉の活用に動く。世界2位の欧州アルセロール・ミタルは欧米での電炉新設などに2030年までに約1兆円を投じ、世界第3位の中国・河鋼集団も電炉比率を引き上げる。電炉への急速なシフトは、原料となる鉄スクラップの争奪と価格高騰、用途拡大にむけた技術開発といった課題を浮き彫りにする。
鉄鋼生産には鉄鉱石と石炭由来のコークスを反応させる高炉法と、鉄スクラップを電気の鉄で溶かして鋼材を再生する電炉法がある。高炉は大量生産にむき、世界鉄鋼協会によると20年の粗鋼生産量19億トン弱のうち高炉が73%を占めた。一方で石炭を使うためCO2が大量に発生する。
電炉の粗鋼生産1トンあたりのCO2排出量は、日本では発電時も含め0.5トンと高炉の4分の1だ。ほかにコークスの代わりに天然ガスや水素で鉄鉱石から酸素を取り除く直接還元法(DRI)もある。専用設備で生産した「還元鉄」を、電炉で溶かして鉄をつくる。DRIもCO2排出量は高炉の6~8割ですむ。
ミタルはスクラップとDRIの活用など脱炭素技術に、30年までに総額100億ドル(約1兆1千億円)を投じる。ドイツでは最大15億ユーロ(約2000億円)かけ、2カ所でそれぞれ電炉とDRIプラントを新設する。合計の生産能力は350万トン。スペインとカナダでも粗鋼生産能力が年110万トン、同240万トンの電炉をそれぞれ造る。
同様の動きはアジアでも広がる。河鋼集団の幹部は中国国営の新華社の取材で、30年までに電炉比率を25%に高める計画を明らかにした。大手だけではない。四川省では7月、電炉8社が統合して四川冶控集団が誕生した。年産能力1000万トン強は中国最大で、日本の独立系最大手、東京製鉄の20年度の生産量の4.5倍にあたる。
韓国ポスコは合弁会社を通じメキシコで年産150万トン規模の電炉新設を検討しており、21年中に計画をまとめる考えだ。
日本勢では日本製鉄が30年までに国内に生産能力200万トン級の大型電炉を造る。「具体的な計画がまとまるのは22年より先」(日鉄幹部)としつつ、設備メーカーへの接触を始めた。
高炉が主軸の鉄鋼大手が電炉に力を入れる背景には、各国の環境政策がある。欧州連合(EU)の欧州委員会と日本は温暖化ガス排出を50年までに実質ゼロとする目標を掲げる。中国も60年にCO2排出量を実質ゼロとする計画だ。鉄鋼業界は世界の産業界のCO2排出量のうち2割を占めるだけに鉄鋼各社も対応を迫られる。
脱炭素の切り札には高炉でコークスの代わりに水素を使う手法があるが、実用化は当面先。水素を鉄鉱石中の酸素と反応させると温度が下がり、鉄鉱石を溶かすための高温を保ちにくいためだ。日鉄は水素製鉄を「前人未踏の技術」と表現する。関連設備の導入にも日鉄だけで4兆~5兆円かかる。そのなかで当面の現実解として電炉への注目が高まっている。
もっとも急激な電炉シフトには3つの課題がある。1つが良質な鉄スクラップの確保と価格高騰だ。20年の電炉比率は米国と、EU(英国含む)はそれぞれ71%、42%だった。一方、中国は9%、日本は25%、韓国は31%にすぎない。
中国政府はこの比率を将来は20%に高める目標を掲げる。同国の粗鋼生産量が20年の10億6500万トンのままとすると、電炉比率が11ポイント高まれば、単純計算で1億トン以上のスクラップが新たに必要となる。
中国はスクラップ確保に動き始めている。1月には不純物が少ない上級品種を中心としたスクラップの輸入をおよそ1年半ぶりに解禁した。6月分の平均輸出価格は12年10カ月ぶりの高値をつけた。争奪戦が本格化して値上がりすれば鉄鋼各社のコスト負担は増える。日本政府もまず30年度に温暖化ガス排出量を13年度比46%減らす目標を掲げる。粗鋼の国内生産量などが同じと仮定すると、19年度と比べ高炉の生産量を57%減らし、電炉を2.8倍に高めなければならない。スクラップ需要はざっと4000万トン近く増える計算だ。
鉄は車や建物などに形を変えて日本では14億トン、中国で95億トン強、世界全体では330億トン強が「埋蔵」されている。スクラップは車や建物の解体などで発生するため、鋼材需要に合わせて一気に増えるわけではない。今は高炉法が主体のためにスクラップ需給も安定し、世界の流通量は年1億トン程度で推移する。中国などが一斉に電炉の活用にかじを切れば、スクラップの世界需給が逼迫する可能性がある。
2つ目は電炉製鋼材の品質向上だ。鉄クラップは不純物が混じりやすい。緻密に成分を調整して軽さと強さを両立させた自動車用鋼板などには不向きとされる。用途を主流の建材などから広げるには不純物を取り除く技術や、不純物があっても高機能鋼材に加工する技術が欠かせない。
電源も課題となる。電炉のCO2排出量は電源構成で変わる。火力発電への依存度が高い日本では、他の国・地域よりも電炉の環境負荷が高くなる。
自動車メーカーなど需要家が環境負荷が低い素材を求める動きは加速する見通し。環境負荷やコスト競争力を含め「選ばれる鋼材」の実現に向けた新たな競争が始まる。
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