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報道年月日 |
2022/01/21 |
報道機関名 |
毎日新聞 |
会員名 |
脱炭素 |
タイトル |
LNG争奪戦加熱 2021年中国輸入量 日本抜き世界一に |
報道記録の内容 |
中国の2021年の液化天然ガス(LNG)の輸入量が日本を抜いて世界一になった。石炭に比べて燃焼時の二酸化炭素(CO2)排出が少ない天然ガスを「低炭素」エネルギーと位置づける中国が「爆買い」しているためだ。同じ理由で天然ガスを求める国は日本を含めて少なくない。LNG争奪戦が激化すれば、各国のエネルギー政策や脱炭素戦略にも影響しそうだ。
20日発表された日本の貿易統計によると、21年のLNG輸入量は7431万トン(前年比0.2%減)。中国の輸入量7893万トン(同18.3%増)を下回った。15年時点で中国の輸入量は日本のわずか4分の1程度に過ぎなかったが、その後は右肩上がりで増加。市場で21年中には起こると予想されていた「逆転劇」が現実となった。
日中逆転の背景にあるのが、脱炭素化を急ぐ中国の気候変動対策だ。習近平国家主席は20年9月の国連演説で、30年までにCO2排出量を減少に転じさせ、60年に温室効果ガスの排出を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」を宣言。同年12月には別の国連会議で、再生可能エネルギーである太陽光と風力の設備容量を30年までに、原発1200基分に相当する計12億キロワット以上に引き上げる意向を示した。
だが、現状では総発電量に占める風力・太陽光発電の割合は1割程度にとどまる。排出量を抑えつつ電力需要を満たすにはどうするか。目を付けたのが天然ガス火力だ。実際、寧吉哲・中国国家統計局長は17日の記者会見で、天然ガスについて、発電時にCO2を出さない水力、風力、太陽光、原子力と並ぶ「クリーンエネルギー」との認識を示した。
LNGは天然ガスをマイナス162度に冷却して液化させたもの。天然ガスは取れる場所から輸送先までをパイプラインで結んで運ぶ必要があるが、液化させると体積が約600分の1にまで減るため、タンクに貯蔵するなどして鉄道や船で運ぶことができる。
中国はロシアや中央アジアなどからパイプラインで天然ガスも直接輸入している。だが、近年はそれほど増やしておらず、中国のエネルギー動向に詳しい関係者は「中露関係は微妙で、ロシアに主導権を握られることを警戒している」と分析する。「エネルギー安全保障」の考えが強まり、内モンゴル自治区や四川省などで天然ガスの探査や増産も進むが、国内需要を満たすには不十分。そこで、LNGの購入が増えたというわけだ。
長期契約ではなく、価格が変動しやすいスポット(随時契約)市場での調達が多いのも中国の特徴だ。中国国内の電力不足が伝わった21年10月には、LNGのアジア向けスポット価格が100万BTU(英国熱量単位)あたり56ドルと、前年同時期の10倍以上に急騰。世界的なLNG価格高騰の引き金にもなった。
その後、中国は電力不足を解消しようと石炭を増産。LNGの「爆買い」も一段落し、アジアのスポット価格も現在は20~30ドル程度で推移している。ただ、中長期的な中国の環境対策の強化方針に揺るぎはない。脱炭素の主役はあくまで再生エネとなるが、今後もLNGを活用していくとみられている。対立が激化している中国からの輸入も急増中。今や輸入全体の1割が米国からとなっていることからもLNG確保への本気度がうかがえる。
中国より10年早い50年での温室効果ガス排出実質ゼロを目指す日本はLNG争奪戦にどう対応していくのか。
日本が初めてLNGを輸入したのは人口増加や高度成長でエネルギー需要が急激に伸びていた1969年にさかのぼる。大気汚染などの公害が社会問題化していたことに加え、中東戦争を引き金に中東産油国が原油の価格を引き上げたオイルショックもあり、石油、石炭に代わる第三の化石エネルギーとしてLNGの輸入が本格化した。
少子高齢化や経済の停滞で輸入量は14年の8850万トンをピークになだらかに減少。それでも11年の東京電力福島第一原発事故で全国の原発が稼働しなくなった影響もあり、19年度実績でLNG火力は総発電量のうち全電源中最大の37%を占める。
エネルギー政策の中長期方針を定めるエネルギー基本計画でも、LNGの割合は30年度時点で20%。依存度は高い。基本計画では30年度に温室効果ガスを13年度に比べて46%削減するという政府目標の実現に向けた電源構成として、再生可能エネルギーを36~38%、原子力を20~22%と見通しているが、19年度実績では再生エネは18%、原子力は6%にとどまる。いずれも見通しに達しないとなると、ますますLNGの重要度は増す。だが、輸入量を増やしてきた中国の勢いを前に、経済産業省幹部は「とにかく猛烈だ。今後は買い手としての日本の存在感が低下するのはさけられそうにない」と打ち明ける。
LNG市場で存在感を高めているのは中国だけではない。70年の温室効果ガス排出実質ゼロを宣言したインドなどアジア各国もLNGの需要を伸ばすとみられている。石油世界大手「ロイヤル・ダッチ・シェル」はLNGの世界総需要が20年の3億6000万トンから40年には7億トンまで伸び、アジアに限ると、75%近く増加すると見通している。
需要に見合った供給が確保されるのかも不安視されている。世界が脱炭素化を急ぐ中、天然ガスを含めた化石燃料の採掘や開発にかかえるお金が調達しにくくなっているためだ。シェルによると、20年はLNGの生産能力は全世界で300万トンしか増えておらず、この傾向が続けば、20年代のうちに供給不足が拡大すると指摘されている。
再生エネの主力電源化や原発再稼働によって脱炭素化を急ぐ日本。その戦略に狂いが生じた場合、LNGに頼らざるを得ない事態が予想されるが、大手エネルギー企業の幹部は「石炭から天然ガスへの切り替えがCO2排出削減に直結する途上国に対し、すでに一定の切り替えが進んだ日本は買い手として対抗できない。LNG争奪戦となれば、日本は買い負ける」と懸念する。
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